基本ライトノベル

ライトノベルについて書くブログだったはずだけど日記のブログだよ

共同生活ものの魅力

僕は思うのだけれど、人生においてもっとも素晴らしいのは、過ぎ去ってもう二度と戻ってくることのないものなのだから。──村上春樹『使いみちのない風景』

魔法使いの夜を最近もう一度やって、リトルバスターズを観て(ゲームはプレイ済み)、さくら荘のペットな彼女を読んで、森博嗣のVシリーズを全部読み返していたら、共同生活ものってなんて素晴らしいんだろう……素敵だ……何がこんなに良いんだろう……と考えてしまった。とにかくどれも良いよね(リトルバスターズはちょっと違うけど)。それで、何が良いのかと考えていた。過ぎ去っていく風景。長い人生の中でも、ほんの一瞬しか成立しない奇蹟のような時間、そこからくる儚さ、寂しさ。

そう、共同生活物で、僕が一番重視したいのは「一瞬しか成立しないかけがえのない時間」であることだ。魔法使いの夜はまだ第一作(全三作らしい)しか出ていないが、魔術師の二人の女の子と山育ちの男の子がひょんなことから洋館で共同生活を始める物語だ。この特殊な状況はやはり特殊な事情によって成立していて、いつ崩壊してもおかしくはない。が、なんとか、その一瞬だけは成立している共同生活だ。リトルバスターズは男女別の学生寮なのでまた事情は違うけれど、しかし「終わり」が今挙げた4つの作品の中では最も強い意味を持っている。

さくら荘のペットな彼女では問題児ばかり集められたさくら荘で、クリエイターと(クリエイターの卵)達が共同生活をしながら壁にぶち当たったり恋に悩んだりする。彼らの共同生活が終わりを迎えるのは、高校生だから当然だが卒業だ。いつまでもみんな一緒ではいられない。最後に森博嗣さんのVシリーズでは阿漕荘と呼ばれるアパートにいる大学生二人と探偵1人、それからすぐ近くに住む無職の天才瀬在丸紅子の4人を書いたミステリーが描かれる。

彼らの関係もまた危ういものだ。保呂草という探偵は裏の職を持っており、その職の特殊事情からあまり長く阿漕荘にいられないことはわかりきっている。また大学生2人も当然ながら、いづれ卒業していく。そもそも共同生活ものとは男女が洋館なりアパートなり、日常的に顔を合わせる場所に住むことにより、昼もなく夜もなく顔を合わせ、そこから来る普通ではあり得ない関係をみるのが醍醐味なのだ。

通常付き合っても居ない男女が、一つ屋根の下で暮らしたりはしない。Vシリーズでは夜に4人が集って麻雀をよくするのだが、それが出来るのも阿漕荘という一つのアパート、すぐとなり同士に住んでいるからである。時には花火をし、時には一緒にイベントに出かけ、夜は静かに話しながらコーヒーを飲む。彼女や彼氏、あるいは結婚相手とではなく、微妙な関係の男女が複数人集まってそうした共同生活をつくり上げる、なかなかない関係性なのだ。

しかし……だからこそ、それが成立するのは一瞬の期間しかない。たとえば30代の男女がそんな事をしていたら傍から見れば乱交チームか何かかと疑われてしまうだろう(直接過ぎな表現だが)。またそれぐらいの年代になると当然だが自分の家庭が出来る。家庭を持ってしまったら当然だが、そんな生活は成立しない。だから高校生、あるいは大学生などの一瞬の期間だけ、そうした生活が成立するのだ。そして長くは続かない。それがわかっているからこそ、読んでいるとどんなに楽しい時を過ごしていても常に儚さが存在しているんだよね。

Vシリーズも魔法使いの夜も今回再読/再プレイだったのだけど、この関係がいつか終わってしまうことを考えながら読むと、たとえばVシリーズの面々が4人で麻雀をしている場面でも、寂しくてたまらなくなるのだ。ここにいるこいつらのこの関係も、後少しなのだなと……。ページをもとに戻し、再度めくればまた現れるが、それは同じ麻雀の繰り返しでしかない。

共同生活ものとして特に気に入っているのは上にあげたものからだと『魔法使いの夜』とVシリーズなので、これらについてもう少し書く。リトルバスターズはやっぱり寮なのでちょっとズレるし(一瞬しか成立しないかけがえのない時間という観点からみると、これ程語り甲斐のある作品もない傑作なのだが)さくら荘は恋愛押しが強すぎる。

そう……どうしても男女の共同生活ものなので、恋愛の要素は入ってくる。入ってこないわけがないし、そうした微妙な距離感のどきどきが魅力のひとつでもある。日常において普段は見られないちょっと無防備なところや、誰も知らない朝の弱さとか、そうした部分が関係性の中で提示されてくるのが素晴らしいのだがそれはおいといて……。あ、そういやToLOVEるのような作品の共同生活は除外ね……アレはよく似た別の何かだから……。恋愛の要素について以下続き。

微妙な距離感のどきどきがいいのだが、かといって恋愛色を強めすぎると「彼氏彼女が発生」して共同生活が破綻する。一方恋愛色を高めながらもくっつけずにひたすら焦らしまくると今度は馬鹿やってんじゃねえ! と飽きてしまう(めぞん一刻)。そういう意味ではまだ恋愛を強く意識しない関係性=魔法使いの夜 やそれぞれの特殊事情から恋愛の成立しようがない関係=Vシリーズといった、恋愛色を適度なところに抑える構造の作品が、僕は好みである(もちろんどちらの作品も恋愛が皆無なわけではない)。

まだまだ書けそうだがいったんこのあたりで。何かおすすめの共同生活ものがあったら教えて下さい(めぞん一刻をのぞく)。あとずっと共同生活ものと勝手に呼称してきたけど、何か正式な名称とかあるんだろうか。