基本ライトノベル

ライトノベルについて書くブログだったはずだけど日記のブログだよ

めだかボックス外伝 グッドルーザー球磨川

禊ボックス。いやはやこれは思ったより真っ当な能力バトル物であり、ジョジョリスペクトが入りすぎて気持ち悪いぐらいになっているなあ。いやいやこれをジョジョのノベライズで皆待っていたんですよ西尾さん、あのノベライズの評判悪いじゃないですかと言いたくもなる。なかなか面白かったんだけどね、ジョジョノベライズ。まあとにかく、めだかボックス外伝グッドルーザー球磨川である。人気投票でも主人公であるめだかちゃんを常に抑え一位をとってしまう球磨川くんだが、まあそれもわかろうというものだ。

安心院さんと球磨川禊を生み出した点で僕はめだかボックスが大好きだ。マンガ本編においてはもはやその二人はなんだかよくわからない感じで味方になってしまい、もてあましてしまい、なんともぐだぐだな展開を迎えているように見える。もうグダグダ。スキルだけで済んでいればよかったところを、スタイルなんて意味不明なものを出してしまい、さらにいえば安心院さんというこれ以上ないほどのキャラクタを出しておきながら、安心院さん編を終わらせた後そのまま作品を続けようとするんだから、それもしょうがないのか。

もっとも──スタイルは斬新かつ西尾維新先生がやるべきものだったとは思う。それは確かだ。でも出すタイミングが悪かったよなあ。と漫画の愚痴はそれぐらいにして小説は全く別物なので、まとまっている。本編の前日譚、球磨川禊が箱庭学園にやってくる前に起こった出来事である。安心院さんに球磨川禊くんは「どれだけ敗北主義を貫けるのか」を確かめるために4つのミッションをクリアすることを強いられる。球磨川禊は相棒である須木奈佐木咲と共に生き残ることが出来るのか!?

球磨川禊は、何ものにも価値を認めないキャラクタとして描かれている。弱すぎるが故に弱さを熟知している。すべてを受け入れている。仏陀だ。仏陀なのだ。そんなことはどうでもいい。どうあっても負けてしまう球磨川禊はあらゆる弱さを引き受けている球磨川禊は英雄が古来から「人間は困難な出来事を乗り越えることが出来る」証明をしてきた事とは真逆に、誰もが自分の弱い部分を仮託し、生き方を肯定できるような存在、新時代の英雄なのだろう。

ひょうひょうとして自分の行動に一貫性を持たずほぼランダムな言動をとるためまわりの人間は解釈を迫られることになる。だからまああまり主人公向けとはいえないだろう。ほとんど語らないし、語るべきこともないのである。なので球磨川禊を主軸にして話を動かすということはそのままつまり、彼はいったいどういう存在なのかを解釈していくことにほかならない。であればこそ本作の語り部、主人公、主軸は球磨川禊ではなくその相棒たる須木奈佐木咲なのである。

まあそれは普通に面白かったのでそれぐらいにして、意外や意外、話運び自体がおもしろかったのである。安心院さんが用意した4つのミッションはどれも知能戦、第ゼロミッションはロシアンルーレットにどうやって勝てばいいのか、第一ミッションはプールの水底に刺さった剣を、水を抜かずに抜け、第三ミッションはチェスと、それぞれ相手にはスキルホルダーだったりそうでなかったりするのだが知恵を絞って闘うのだ──。知恵を絞って。

ジョジョにおいて能力バトルが単純な戦闘力比較だけではなくゲームに適用でき、通常の戦闘においても頭を使って勝つ描写がよく行われたが(あいにくジョジョ以前にそんなことがされていたか僕はよく知らない)、西尾維新が本作で試みたのもめだかボックス版スキル知能バトルであるのだろう。で、これがやたらめっぽう面白かったのだ。何が面白さの理由なのだろうなあ。

こういう知能ミッションの面白さ自体はシンプルなもので、まあなぞなぞみたいなものだろう。「ぴかっ」とする感覚というか。自分が思いつきもしない、思考外からのアイディアは、知ると自分の世界が広まったような(さすがに大げさだが)快感がある。なぞなぞの面白さの源泉とはそうしたところにあって、本作で言えば「ロシアンルーレットの必勝法とはいわないものの誰でも論理的に勝てるやり方を考えろ」などがこれに当たる。

これに現実を超越した「スキル」が条件に加わってきたのが第一ミッション以降のもので、スキルが加わることによって条件はより多様化し、想像力を必要とし、その分通常味わえない感覚を持つことが出来る。知的能力バトル物の快感とはたぶんそうしたところにある(あまりうまく伝達できているとは思えないけど、ニュアンスぐらいは伝わっただろう)。この面白さ自体はそのうち具体的に書いてみよう。今日はもう眠いので寝る。