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基本ライトノベル

ライトノベルについて書くブログだったはずだけど日記のブログだよ

「伝わっていくのは人の悪意だけだ」

と神山健治監督がアニメスタイルのインタビューで語っていたが「悪は善より強し」という論文では「人間は悪い感情、悪い両親、悪い評価を、よい感情、よい両親、よい評価よりもずっとくわしく検討するものである。そして、よい自己規定を求めるよりも熱心に、悪い自己規定を避けようとする。悪い印象や悪いステレオタイプはよい印象やよいステレオタイプより容易に形成され、しかもなかなか取り消されない」と総括されている。人間関係を長期的にうまくやっていくためには、よいことを求めることよりも悪いことを避けるほうがはるかに大切だという。

経済学的に言えば「人間には損失をより高く評価する傾向」がある。また危険をふくんでいる言葉(戦争、犯罪)は幸福感に満ちた言葉(平和、愛)よりも早く注意を喚起する。これは人間におけるシステム1のせいだ、と『ファスト&スロー : あなたの意思はどのように決まるか?』の中で書かれている。ちなみにシステム1は簡単にいえば直感や感情といった素早く判断をする自動応答システムぐらいの意味だ。対して、17✕24=? といった問題をみたときにあたまのなかでじっくりと考えを始めるのがシステム2だ。

悪い言葉に反応するのにも理由はちゃんとある。大自然の中で生きていた頃にはちょっとした危険の察知速度が自身の生死を分けただろう。人間に限らず動物の脳には悪いニュースを優先的に処理するメカニズムが含まれているようだ。そしてそれは正しい。正義は伝播しないのではなく、悪意よりも伝わるのが遅いのだと思う。なぜなら正義をなすのは理性であり、理性を推し進めるのは17✕24は? という問題に必死こいて答えようとしているシステム2なのだから。

しかしシステム2は怠け者で、動くのに時間が掛かるし消耗されるので使いすぎると動かなくなってしまう。かといってシステム1に頼りすぎれば認知的バイアスの罠に容易く落ち込む。まあそうだよね、人間だもの、といった感じ。

神山監督はだからこそヒーローの行動を継承する人はほとんどいないし、あとの大多数の民衆は利己的で欲深い醜悪な本性を持っているものなんだ、しかしだからこそ正義を書いて伝播しにくいものを映画の中で伝え続けたいと言っているが、ぶっちゃけそんなだいそれたこと考えるよりも、チェックリストを作ったり数値で評価できるものについては数値で評価したりといったごくごく地道な方法をとったほうが余程効率が良いと思った話。