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基本ライトノベル

ライトノベルについて書くブログだったはずだけど日記のブログだよ

遠藤 浅蜊『魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)』

これは大変面白かった。16人の固有能力持ちの魔法少女が一つの町で殺しあうバトルロワイヤル物なのだが、ライトノベルっぽくない。殺し合いというテーマが、ではない。状況描写、町並みの描写が密にあるのはもちろん、キャラクタの語尾がとてつもなく不自然に(その代わり語尾だけでキャラクタが判断できる)わけでもなく、「魔法少女」ではあるもののその中にいるのは具体的な人生を持った悲哀交々な人間である。本作では魔法少女は、選ばれた時点で「少女」の外見を与えられるものの、中身に関しては高校生や中学生だけではなく、おばさんやおじさんだってありえる設定なのだ(これは別にネタバレではない)

何より描写がシビアだ。残酷に人が死ぬ。元祖・バトルロワイヤルでも無残に人が死んでいく描写が粋だったし、そうした特殊状況下での駆け引き、生き死にをかけた必死さといったものは普段遭遇することがないだけに物語として美味であるように思う。デス・ゲーム物やバトルロワイヤル物が、今尚各所で人気なのも「残酷さ」が人を惹きつける面と、何より生死をかけた人間ドラマ……しかもそれが歴史的な戦争などに結びついていない、ファンタジーであるという点があるからではないか。最近だとハンガー・ゲーム、デスゲームならインシテミルなどこのジャンルの映像化人気も強い。アニメになったりしないかなあ。

さて、バトルロワイヤル物としては別、本作の一つの側面は「能力バトル物」だ。魔法少女はそれぞれ1つの固有魔法を使うことができ、その能力をつかって人助けをしたり、あるいは魔法少女同士の戦闘を行ったりする。自分の剣の大きさを自在に変えることができる戦闘向けの能力や、困っている人を探知できる人助け用の能力などシングルアクションのものばかりだが、これが有効に組み合わされていておもしろい。

「有効に」とはどういうことか。能力バトルものにも単純な肉弾戦、戦いを主とするものから「頭脳能力バトル」と呼ばれるジャンルといったように微妙に細分化が進んでいるが、「うまく能力が組み合わされている」ぐらいの意味で捉えてもらいたい。たとえば本作だと絶対に死なない魔法を持っているやつがいたり、どこにでも穴を開ける能力を持っているやつがいたり、投げたものが相手に百発百中であてられる能力を持っている魔法少女などがいる。

こんな事は起こらないが、どこにでも穴を開ける能力を持った奴がデカい穴をあけて、投げたものが相手に百発百中であてられる能力を持った奴が絶対に死なない魔法を持っている奴を穴に落としこんで二度と出てこれないように埋めてしまう、などといった「能力のいろんな使い道、組み合わせ」が見せてもらえることぐらいの意味で「有効に組み合わされている」といっているわけである。僕のたとえは下手くそだが本作はもっともっとうまいので是非読んでもらいたい。余談だが能力バトル物でいちばんよかったのは『戦闘破壊学園ダンゲロス』なのでこちらもオススメ(小説も漫画も絶品)。

また最初に描写がシビアだ、と書いたがこれがとても物語としての特徴になっている。汚く生き残ろうとするものあり、チームを組むものあり、裏切りあり、それからハリウッドなどでは顕著だが日本ではあまり見られない「追い詰められる状況になると絶対に出る頭でっかちなシスター」あり、かたや希望を持って生き延びようとするものあり、魔法少女としての本分を全うしようとするものありと、それらは等価に並べられていて何が正しいなどはもはやない。あるのは残酷な行動(裏切り、殺しなんでもありで生き残る)と暖かさを感じる行動(人を助けたい)のコントラストでありこのテンションは物語が進むに連れてどんどん均衡して高まっていく。

物語のつくり方として、たいへんうまいし面白いと思った。これで新人とは正直信じられない。