基本ライトノベル

ライトノベルについて書くブログだったはずだけど日記のブログだよ

はたらく魔王さま3巻まで

特別ぶっ飛んだ内容ではないもののオーソドックスに、堅実に話が進んで、キャラクタが組まれていて、構造の安定感が素晴らしいですね。しょうじきこんなどうしようもないタイトルでアニメ化までしてどないせーっちゅうねんと思っていたんだけど、これが実によくできている。よくある「封印された力がピンチになると開放される」系統の主人公で、このてのさくひんは大抵あとになればなるほど力の解放が簡単になりパワーインフレがおこってあっという間にどうしようもないぐだぐだの初期設定どこいったんだよ世界観に突入してしまうのですが。

三巻までよんだところかなり抑制がきいていて、そういうことにもなっておりません。またはたらく先が笹塚のマクドナルドで、必死に勤勉に励みながらも実は魔王であるという、ギャップの面白さはよくある手法ですけど、これもあくまで「マクドのクルー」としての描写を徹底的にやっているので好感が持てるし面白いですね。魔王っていう設定も「異世界から日本に飛ばされてきた設定にすりゃあ異世界の設定なんてどうだっていいや〜かかなきゃすむはなしだし(へらへら」という軟派なかんじではなく(そんなやつがいるのかしらんが)あくまでも緻密に設定して(後付かもしらんが)段々と情報を出していっているあたり、べつだん褒めるポイントではないにせよマイナスにもなっていない良いところであります。

文学作品ならいざしらず何巻も話を引き伸ばし続けなければいけないラノベや漫画のようなエンタメ作品ならその面白さといったものはプロットというかその前段階の設定に比重がかかってきてしまいます。ようはキャラクタであるとか、それ以上にそれらのキャラクタが「なぜいっしょにいて」「なぜジレンマがうまれて」「なぜ問題が解決しないのか」といったところの設計をうまくやらないと、長く続けていくことができないか、長く続けるに従って崩壊に近づいていくものです。

たとえばラブコメだったらAちゃんというかわいい女の子と、ひめたる力があるけど普段は隠しているBくんがいて、なんやかんやあって二人がひかれあって──といって、映画や一巻で終わっていいのだったら付き合わせようが殺しあわさせようがどっちかを殺そうがなんだっていいわけですけど、何巻も続けるのだったらそこには「くっつかない理由」が必要なわけで、たとえば本作の場合でいえば主人公が「魔王」でヒロインが「勇者」なわけです。まあここ何年かよくある構図ですけど。

これは何も主人公とヒロインに限った話ではなくて、たとえばスポーツ物でもマネージャーが空気になるかいなかってのは、プロットを組む時点である程度わかっちゃうものなんですよね。マネージャーがたとえば主人公の恋愛の動機である(スラムダンク)とか重要な能力を持っている(分析能力)なんかがないとテニスの王子様みたいにいつのまにか消えてなくなっていってしまうわけで。マネージャーでたとえたけれども、たとえば本作みたいな異世界ものであれば「日本生まれのヒロイン」というのが当然ワンポジションおさえているわけですけど、何の能力もないただの日本人女子なのでなにも手をうたなければ(役割を作ってあげなければ)物語からたやすくフェードアウトしてしまうのですよ。

その辺のさじ加減をどうするのか、っていうのは最初の設定段階でほとんど決まってしまうわけで、ここをしくじると悲惨な作品になってしまう。ニセコイみたいに。本作はそのへん、ボンドで隙間を埋めていくみたいに着々と穴を詰めていくので読んでいると感心してしまいます。というわけで全体評価としてはとにかくマイナスがないといったところ。まあ、魔王と勇者が日本に残っている理由が「あ、そうですか……」としか言い様がない内容で、ひどく薄いわけですけどそこぐらいか。派手ではないものの(派手なんだけどなあ。)こういう作品にちゃんと人気が出てアニメ化までしているってのは、なかなかすごいもんですね。アニメはみないが……。