基本ライトノベル

ライトノベルについて書くブログだったはずだけど日記のブログだよ

アニメ化するラノベを読んでいく2

さあ、いきなり1で躓いてしまったが今度こそ確かにアニメ化が決定している作品だぞ、ということでアウトブレイク・カンパニー by 榊一郎 をとりあえず3巻まで読む。これは面白いなあ。発想が突飛だけどそれが物語にうまく落とし込まれていっていて良いですね。基本的に物語を評価するときの大まかな方針として1.意外な状況からはじめて、それを真っ当に落としこんでいく のか2.真っ当な状況からはじめて、意外な展開にしていくのか のどちらかがあるのかをみているわけですけど、1の好例です。突飛な状況からはじまって突飛な発想のまま終わるのだったらだれにでもできますし、真っ当に始まって真っ当に終わるんだったらなんにも面白くありません。

ストーリーは簡単に説明すれば高校生の不登校オタクが突然に世界に飛ばされて……とここまでだったらむちゃくちゃありがちな話ですけど、飛ばされた異世界で「オタク文化の伝道師となる」というところが新しいです(僕が読んできた中では)。文化侵略ファンタジーというか。今まであんまり見たことないなあ。異世界に高校生が飛ばされる作品は数あれど、ある人物は超越したゲーマーでゲームの世界で能力の限りを尽くしてみたり、ある人物は軍オタで軍略の限りをつくしてみたり、あるいは特に特別な知識は持っていないけれど異世界者だからよくわからん超越した力を持っていたり、あるいは異世界に飛ばされた理由がそもそも「王」だからだったりしたり、そもそも現実世界で超越的な力を持っていたからこそ異世界に連れていかれたりとパターンはさまざまです。

クールジャパン熱もあがってきて、出すにはちょうどいいタイミングだったんでしょうね。実際もともとある文化圏によって、同じコンテンツでも受容のされ方はまったく異なるのも知っての通り⇒オタク・イン・USA:愛と誤解のAnime輸入史 (ちくま文庫) by パトリック・マシアス - 基本読書 でも不思議と海外でどのように日本のオタクコンテンツが受容されているのかについて書かれた本って数がない。オタク・イン・USA以外にもあるんだろうか。実はそのへんが気になってオタク系洋雑誌を日本の書店で探しまわっていたんですけど、どこにもないのですよ。電子媒体でもないし。ほんとに出てるのかな??

まあいいか。突飛なはじまりですけど、落とし込み方が堅実で素敵です。高校生男子が突然異世界に飛ばされるのにも様々なパターンがありますけど(一番多いのは無理やり連れ去られるパターン)、本作もどちらかといえば無理やり連れ去られるパターンなのかな。ただ現実世界との行き来が自由で、自衛隊(というか政治)が関与しているあたりが良い。あと言語が通じないとか、文化の異なることからくる摩擦とか、識字率の問題とか、ちゃんと扱っていてくれていいですね。文化侵略をテーマにしようっていうんだからそこを書かないとどうにもならんのは確かですが。

ようは、そうした(政治とかの現実の)要素を絡ませると書かないといけない事ががっと増えるので面倒くさいからあんまり手を出されないのだけど、ちゃんと書かれていて好感が持てるのです。言葉がほとんど何の説明もなく異世界で通じていると「けっ」と思ってしまいますから。ただ「いなくなっても誰も困らないし、たいして騒ぎ立てない」からひきこもり高校生男子を連れて行くっていうのはさすがに強引ですがね。オタク関連企業を起業して、夢破れて潰れていったホームレス社長とかその辺にごろごろしていそうですが、いかがでしょうか笑 引きこもりで学校に通っていないとはいえ、そんなやつよりかは余程いなくなっても誰も気が付きませんよ。

まあそうしたリアリティとライトノベルゆえの軽さのバランスの取り方が読んでいて面白いところでもあります。氷と炎の歌シリーズとか、もちろん指輪物語の世界とか、異世界のディティールがほんとに素晴らしいですけど、あそこまで書き込めなんて誰も求めていないわけですから。ようはどこまでは「書いて」どこからは「書かないのか」という取捨選択のところがこうしたライトノベルファンタジーものを読んでいて非常に楽しいひとつの醍醐味のところなわけです。

しかしわざわざ数え上げるようなこともしませんが、オタクを主軸に扱った作品って増えましたね。本作も主人公の両親はラノベ作家とエロゲ原画家というオタク一家ですが、今だと現実に50代60代で同人漫画を第一線で書いて売っていた世代が珍しくないですから、何の違和感もありません。この前中学生の従姉妹と話していたら、今学校で大ブームなのは初音ミクなのだそうです。「初音ミクって知ってる??」といっていろんな曲を訊かせてくれましたが、こっちはこっちでまた文化圏が異なっている印象。ボーカロイドの、曲の小説なんかこれっぽっちも興味がわきませんが(曲を小説化ってなんだ???)、大人気みたいです。

文化ってこうやって移り変わっていくんだなあ。そして、ああ、こうやって若いものが理解できん、なんていう老害みたいな存在(ほんの数行前既になっていたけど)になっていくのかなあとこの作品を読んでいると考えてしまいます。