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基本ライトノベル

ライトノベルについて書くブログだったはずだけど日記のブログだよ

The Martian

『The Martian』という洋書を読んでいるのだが、めちゃくちゃ面白い。元はkdpで個人出版したものを最近出版社から再出版された作品。火星有人探査中に強烈な嵐にあって通信断絶、一人生き残った植物学者兼エンジニアの男が、たった一人で次の有人火星探査がくるまで四年間生き延びる様を書いた「ハードSF」。作中では自分が生き延びるために必要なカロリー計算と、それに見合うだけのポテトの栽培、それに必要な水をなんとかして得なければならぬと「生存戦略ー!!」が必死に行われていくまさに「知的格闘技」。

元々個人blogかどっかで連載していたもののようだが、一日ごとに「死ぬか、生きるか」の決断と計算を繰り返して活路を切り開いていくさまは「連載しながら考えている」感があってどきどきする。「こいつ、途中で無理だって諦めてもおかしくないな……」という切迫感が常にある。実際著者のInterviewを読むと先がどうなるか自分でもどきどきしながら書いていたようだ。えらいことやるよねえ。

ハードSFが今でもほそぼそとジャンルとして生き残っているのは、当然「そこにしかない価値」があるからだ。代替不可能な価値があるからこそ残り続けている。そしてその価値ってのは、これだと簡単にいえるものでもないんだけど、こういう「どうやるんだ!?」っていうワクワク感の中に大きな要因があると思う。たとえば物語において敵が出てきて味方と戦う展開は常道だが、「どちらが勝つんだ!?」と手に汗握る展開がやはり王道であり面白いものだ(俺TUEEE系は除外させてくれひとまず)

ハードSFの面白さのひとつは「ありえない状況」を「いかにして科学的にありえるように書くか」というはらはらどきどきの演出にある。もちろん他にもいくつかおもしろさはあるのだがそれはこっちで書いたから繰り返さない。⇒オービタル・クラウド by 藤井太洋 - 基本読書 まあとにかく面白い作品だ。早く翻訳されればもっとおすすめできるんだけど。

本作で主人公の男が状況を一つ一つ確認していって、このままじゃ俺は死ぬが、かといってやれることがないわけではない。植物学者としての意地をみせてやろう、4年間、火星で生き延びてみせる……といって思考を開始するときの「きたーーーー」感はなかなか味わえるものではない。それは「主人公の凄さ」だけに盛り上がるのではなく、火星で一人の人間を4年間生き延びさせる科学的な道理を考えてみせようと宣言してみせた「作者」の覚悟に、メタ的な盛り上がりが追加されているのである。

しかしこれ、KDP作品なんだよねえ。日本でもKDP発の小説作品ってもう何作も出ているから特記すべきことでもないけれど、才能は発見されるものだな。と、強制的に話をつなげてみたところで 僕もKindleで本を出したのでよろしくね! Amazon.co.jp: 冬木糸一のサイエンス・フィクションレビュー傑作選 eBook: 冬木糸一: Kindleストア