基本ライトノベル

ライトノベルについて書くブログだったはずだけど日記のブログだよ

妹さえいればいい。(1,2\平坂読)

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)

妹さえいればいい。2 (ガガガ文庫)

妹さえいればいい。2 (ガガガ文庫)

まさかこれもライトノベル作家物だったとはなあ……。時雨沢恵一さんが作家生活を解説するようなシリーズ『男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。』を出して伏見つかささんが同じく作家物である『エロマンガ先生』シリーズを開始して同時期に他にいくつもはじまって(面倒だから挙げない)、もちろんそれ以前からライトノベルでもちょこちょこあっただろうとはいえ、レーベルをまたいで同時期的に人気作家が作家物をスタートしている。時雨沢恵一さんのシリーズのどこかのあとがきで「これからライトノベル作家物くるで」と書いていたような気がするけど、まさにそのとおりになっているといってもいいのではなかろうか。

ライトノベルというのは割合読み捨てされるジャンルで、「その時の時流に特化した作品を出し、瞬間的に人気を沸騰させ売り抜けていく」側面を持っており(これはもちろんマンガやアニメなどと比べて相対的な話だ。一つの話を完結させるにあたって、マンガやアニメや映画よりも何倍も早く話を進めて、出せるがゆえの利点を最大限活かそうとすれば当然そうなる)この「ライトノベル業界」みたいなところで長年生き残っていくためには文章力や物語構築/構成能力などと並んで「何を題材に選ぶのか」「どのような層がいると分析し、ターゲットにし、狙った成果を上げるのか」という分析的なところが必要になってくる(だろうと想像する。)

もちろんその機能は本来は編集部が担うべき役割ではあるのだろうが、どうなんでしょうね。その辺の打ち合わせみたいなのは基本的なところとしてされるのかもしれないが、作家が書けなければどうしようもないので結局は作家次第になるのかもしれない。作家物が連続している(ようにみえる)のは、ようはその能力を持っている=生き延びる力を持っている作家たち(+編集)がそこに商機があると判断している、といってもいいのではないだろうか(70%ぐらい)。その判断の根拠はこういうことなんじゃないかと推測するのはまあ面白そうではあるけれども、僕が考えたところで元になっているデータがないので単なる勘以上のものにはならないだろうなあ。

作家物と一言でくくってしまってもその中にも様々なパターンに分かれており、「現実に作家という仕事がどんなパート・作業にわかれていて具体的にどう進行していくのか解説する」パターンや、「バトル漫画的にライバル作家や極端な問題が立ち上がって、現実的ではないものの派手な解決や対策がもたらされる」パターンや、その中間だったりといろいろだ。本書は基本的にはフィクション要素が強め(登場作家の大半が20代前半、あるいは10代後半、そして突拍子もない問題や事態がおこる)だが作家仕事にまつわる問題や状況を描き出している部分もあり、まあようは中間ぐらいって感じか。

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』あたりを境目にして「ライトノベル読み慣れている人間ならこれぐらいわかるよな?」みたいなネタの含有率が増えていった印象がある。たとえば有名な他作品の話題が当然のように作中に挿入されたり(俺の妹が〜とかソードアート・オンラインあたりを筆頭として)してくるのだが、それも「中高生を主人公とした小説群」が多いからで、実際の中高生がそうしたライトノベル(あるいはアニメ)を当たり前に受容しているから、内輪ネタというよりかはそれが「現実の中高生感」みたいなものなのだろうと思う。一方でボカロ小説系の盛り上がりがあるはずだがそのあたりは(ライトノベルレーベルから出ているものでは)あんまり取り上げられているような気はしないけど。そのネタの極北の一つが作家生活ネタ(作家に憧れている人もいれば、純粋によく読んでいるジャンル作家の裏側が知りたい人もいて)なのかなあと思ったり。

ちなみに本書の話を全然していないが、1巻、2巻共に税理士に相談する作家の税金の話や、取材と称して北海道や沖縄にいったり、TRPGで遊んだり、作家特有のゲームをしたり、どんな環境と道具で文章を書くのかといった「作家日常系」みたいな展開が繰り広げられる。出てくるキャラクタとやりとりは極度にラノベライズされているがその実やっているところの中心はかなりまっとうなものでけっこう面白い。特に2巻では自作がアニメ化されたライトノベル作家が、その出来のあまりのひどさに真剣に悔し涙を流すなど「凄いところまでやるなあ」と思わせるあたりまで踏み込んでみせる。