基本ライトノベル

ライトノベルについて書くブログだったはずだけど日記のブログだよ

読書中の挙動を分析する時代

Moneyball for Book Publishers: A Detailed Look at How We Read - The New York Times
この記事がなかなかおもしろかった。もちろん出版社側、トーハンや日販といった取次はある本を買った人たちの年齢層や性別、どんな階層に属している人たちなのかといった情報をある程度持ってはいるが e-books retailers 、たとえばAmazonやAppleとかは読者がどんなスピードで本を読んで、だいたい買った本をどこまで読むのか、あるいはまったく読まないのかという「読んでいる最中」の情報を豊富にたくわえている。

それを使って、『マネーボール』的に情報分析にかけて売上を増やしたりコンテンツ制作に活かせないかという話である。活かせないかというか、これは当然活かせるだろう。統一的な理論がすぐには出せないかもしれないが、仮説を検証するためのコンテンツを出して、それが「どのような読まれ方をするのか」のデータをとっていくのはもはや難しくはない。

While e-books retailers like Amazon, Apple and Barnes & Noble can collect troves of data on their customers’ reading behavior, publishers and writers are still in the dark about what actually happens when readers pick up a book. Do most people devour it in a single sitting, or do half of readers give up after Chapter 2? Are women over 50 more likely to finish the book than young men? Which passages do they highlight, and which do they skip?

これ、もっと進展したら読者にとっては良いのかもしれないけど(あるいは悪いのか? それすらもよくわからない。)、こうした電子リーダーが弱い、あるいはまったく持っていない出版社は軒並みそのノウハウが得られなくて死ぬ可能性があるのが怖い。『マネーボール』の後日談としては、特定のチームが用いた分析理論はすぐに他のチームも真似することによってあっという間に能力的は均されてしまったという形で終わるのだが、本の場合はデータがとれないと真似することもできない。

まあ、記事ではAmazonやAppleがやっているという話ではなくこうした分析を専門とする企業の創設者がそれをやるよ、別にAmazonやAppleみたいな膨大なサンプルは必要ないよという話になってはいるのだけど、そういう人たちが集めてくるデータがどこまで実際の読者に近いのかは大いに疑問だからなあ。realに近い情報はやっぱりAmazonやAppleが握っているものになるでしょう。

結局、どこもこういう手段を導入しはじめたら「読者にとって良いコンテンツとは何か」と「利益を出したい側にとっての良いコンテンツとは何か」の適切なバランスをどうするのかという話になっていくのかもしれない。その2つは同じものではないわけだから。たとえば、実際にリリースする前にテストリーダー数百人に読ませて、読書中のデータをとり、「この2章で大半の人が脱落してしまうのでここは削りましょう」みたいなやり方で構築されていくコンテンツは本当によくなるのか、という話である。ソーシャルゲームなど他分野でも当たり前のように行われている手法ではあるが、どこまで適用できるだろうか。

それにしても分析はけっこうおもしろい。大半の読者は読み始めてすぐに読むのをやめるけど、やめるページ数に男女で差があるみたいってところとか。『On average, fewer than half of the books tested were finished by a majority of readers. Most readers typically give up on a book in the early chapters. Women tend to quit after 50 to 100 pages, men after 30 to 50. Only 5 percent of the books Jellybooks tested were completed by more than 75 percent of readers. Sixty percent of books fell into a range where 25 percent to 50 percent of test readers finished them. Business books have surprisingly low completion rates.』